安全保障貿易管理について

普段私たちが利用している機械や機器が、外国へ輸出される際に、その用途がミサイルや核兵器などの大量破壊兵器の製造に転用されることがあります。例えば、濾過装置などは生物兵器の製造に悪用される可能性があります。

こうしたリスクを回避するために、輸出貿易管理というしくみが存在します。この制度では、特定の性能や特性を有する貨物については、経済産業省の許可がなければ輸出できないと定められています(リスト規制)。さらに、その他の貨物についても、輸出先や用途に応じて許可が必要になる場合があります。(キャッチオール規制)

重要な規則なのですが、なかなか条文だけでは把握しにくいこともあり、フローチャートでの確認が有効です。

そこで、経済産業省が公開しているフロー図をmermaid形式のフローチャートにまとめてみました

(オレンジ色のブロックはクリックするとリンク先に遷移します、緑色のブロックはマウスオーバーでポップアップ表示します)

安全保障貿易管理のフローチャート

graph TD classDef popup fill:#7BCCAC,fill-opacity:0.5 classDef urllink fill:#ffa23e,fill-opacity:0.5 a(“貨物技術の引き合い”):::popup b(“該非判定”):::urllink c(“客観要件(用途・需要者)の確認”):::urllink d(“例外規定(特例)の適用判断”):::urllink e(“包括許可の適用判断”) f[“許可申請不要”] g[“個別許可申請必要”] h[“個別許可申請不要<br>(包括許可による輸出が可能)”] a—>b b—|非該当|c linkStyle 1 stroke:blue; b—|該当|d linkStyle 2 stroke:red; c—–>|懸念なし|f linkStyle 3 stroke:blue; c—–>|懸念あり|g linkStyle 4 stroke:red; d—>|適用可|f linkStyle 5 stroke:blue; d—>|適用不可かつ<br>包括許可未取得|g linkStyle 6 stroke:red; d—>|適用不可かつ<br>包括許可取得済|e linkStyle 7 stroke:red; e—>|適用不可|g linkStyle 8 stroke:red; e—>|適用可|h linkStyle 9 stroke:blue; subgraph “リスト規制” b end subgraph “キャッチオール規制” c end click a callback “貨物の輸出: 貨物を本邦から外国に向けて船便や航空便で送付する又はハンドキャリーで持ち出すこと b.技術(プログラム)の提供: 貨物を使用するためのプログラムを当該貨物本体や CDーR 等に格納し外国に向けて送付する、ハンドキャリーで持ち出す、メールやクラウド上等で提供すること c.技術の提供: 貨物の設計、製造又は使用に必要な特定の情報(b.のプログラムを除く)を外国に居住する人に対して提供すること これらは、契約書を交わすか否か、有償か無償かは問いません。” click b “#ec-reference” click c “#ec-catchall” click d “#ec-reference”

輸出貿易管理令別表第一・外国為替令のリストに該当するかどうかを調べるには、「貨物・技術の合体マトリクス表」から検索して確認します。(最新版を確認してください)
法令用語と一般的名称が異なる場合がありますので(例:バルブ→弁、ベアリング→軸受け)、関連する用語及び類義語等を参照して、貨物や提供する技術の名称を検索します

リスト規制に該当している場合でも、貨物や技術の種類、形状、価格、使用目的などによっては、無償特例や少額特例などの特例が適用され、輸出許可が不要になることがあります。

名称概要根拠法令
少額特例 少額特例適用可否・適用額
① 1~4の項の貨物 適用されない
② 5~13の項の貨物のうち③以外 100万円以下
③ 別表第三の三に掲げる貨物(告示貨物)
※平成13年経済産業省告示第758号で指定 5万円以下
④ 14の項の貨物 適用されない
⑤ 15の項の貨物 5万円以下
⑥ 16の項の貨物 適用されない

Q&A
輸出令4条1項4号

運用通達4- 1- 4
無償特例無償で輸出/輸入すべきものとして無償で
輸入/輸出した貨物であって、告示および
運用通達で定めるもの
輸出令4条1項2号ホ・へ

無償告示


運用通達4- 1- 2(5)
部分品特例輸出貨物のごく一部として規制対象貨物が組み込まれている場合運用通達1- 1(7)イ
公知の技術既に不特定多数者に公開されている技術を提供する取引等外為令17条5項

貿易外省令9条2項9号
基礎科学分野の研究活動基礎科学分野の研究活動で技術を提供する取引貿易外省令9条2項10号
工業所有権の出願または登録工業所有権の出願/登録に必要最小限の技術を提供する取引貿易外省令9条2項11号
貨物の輸出に付随して提供される使用に係る技術当該貨物の操作・修理等に必要最小限の技術を貨物の輸出に付随して提供する取引貿易外省令9条2項12号
プログラムの提供に付随して提供される使用に係る技術プログラムのインストール・修理等に必要最小限の技術をプログラムの提供に付随して提供する取引貿易外省令9条2項13号
市販プログラムの提供市販プログラムの提供 設計、製造または使用に係る市販のプログラムに関する取引貿易外省令9条2項14号イ

キャッチオール規制のフローチャート

graph TD classDef popup fill:#7BCCAC,fill-opacity:0.5 classDef urllink fill:#ffa23e,fill-opacity:0.5 x[[“経済産業大臣から<br>輸出許可申請すべき旨の<br>通知を受けた場合には、<br>フロー図にかかわらず、<br>輸出許可申請が必要”]] a(“貨物が16項の中欄に掲げるものに<br>該当しないことが明らかか”):::popup b(“仕向け地は輸出令別表第3の国か”):::popup c(“大量破壊兵器等の開発等もしくは<br>別表に掲げる行為に用いられるか<br>または<br>仕向け地が別表第3の2に掲げる国地域であって、<br>通常兵器の開発製造又は使用のために用いられるか”):::popup d(“需要者は確定しているか”) e(“大量破壊兵器等の開発を行う(行った)者か<br>または<br>外国ユーザーリストに該当するか”):::urllink f(“大量破壊兵器等の開発等および<br>別表に掲げる行為以外に用いられることが明らかか”):::urllink z[“リストに該当しない貨物でも、<br>おそれの強い貨物については<br>慎重に判断する必要がある”]:::urllink g(“許可申請不要”) h(“許可申請必要”) a–>|YES|g linkStyle 0 stroke:blue; a–>|NO|b linkStyle 1 stroke:red; b—>|YES|g linkStyle 2 stroke:blue; b–>|NO|c linkStyle 3 stroke:red; c–>|YES|h linkStyle 4 stroke:blue; c–>|NO|d linkStyle 5 stroke:red; d–>|YES|e linkStyle 6 stroke:blue; d–>|NO|g linkStyle 7 stroke:red; e–>|YES|h linkStyle 8 stroke:blue; e–>|NO|f linkStyle 9 stroke:red; f—>|NO|h linkStyle 10 stroke:red; f—->|YES|g linkStyle 11 stroke:blue; click a callback “関税定率法別表第25類から第40類まで、 第54類から第59類まで、第63類、第68類から第93類まで 又は第95類に該当する貨物 →つまり食品と木材以外の貨物” click b callback “アルゼンチン・オーストラリア・オーストリア・ベルギー・ブルガリア・カナダ・チェコ・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイルランド・イタリア・大韓民国・ルクセンブルク・オランダ・ニュージーランド・ノルウェー・ポーランド・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・スイス・英国・アメリカ合衆国” click c callback “別表第3の2の国・地域:アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン” click f href “https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/t04shinsei/t04shinsei_akirakaguide.pdf” _blank click e “https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law05.html#user-list” _blank click z “#ec-catchall-reference”

リスト規制に該当しない貨物であっても、次のような貨物については慎重な判断が必要です

https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/t04shinsei/t04shinsei_heikikamoturei.pdf

輸出令別表第3の2に掲げる国・地域を仕向地等とする場合、特に注意が必要です

https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/t04shinsei/t04shinsei_tsujo_heikikamoturei.pdf

・核兵器
・軍用の化学製剤
・軍用の細菌製剤
・軍用の化学製剤又は細菌製剤の散布のための装置
・300km以上運搬することができるロケット
・300km以上運搬することができる無人航空機
※部分品も含む。

開発、製造、使用又は貯蔵

・核燃料物質又は核原料物質の開発等
・核融合に関する研究
・原子炉(発電用軽水炉を除く)又はその部分品若しくは附属装置の開発等
・重水の製造
・核燃料物質の加工
・核燃料物質の再処理
・以下の行為であって、軍若しくは国防に関する事務をつかさどる行政機関が行うもの、
又はこれらの者から委託を受けて行うことが明らかなもの
a 化学物質の開発又は製造
b 微生物又は毒素の開発等
c ロケット又は無人航空機の開発等
d 宇宙に関する研究
※a及びdについては告示で定めるものを除く。

輸出令別表第1の1の項の中欄に掲げる貨物(大量破壊兵器等に該当するものを除く。)
(一) 銃砲若しくはこれに用いる銃砲弾(発光又は発煙のために用いるものを含む。)若しくはこれらの附属品又はこれらの部分品
(二) 爆発物(銃砲弾を除く。)若しくはこれを投下し、若しくは発射する装置若しくはこれらの附属品又はこれらの部分品
(三) 火薬類(爆発物を除く。)又は軍用燃料
(四) 火薬又は爆薬の安定剤
(五) 指向性エネルギー兵器又はその部分品
(六) 運動エネルギー兵器(銃砲を除く。)若しくはその発射体又はこれらの部分品
(七) 軍用車両若しくはその附属品若しくは軍用仮設橋又はこれらの部分品
(八) 軍用船舶若しくはその船体若しくは附属品又はこれらの部分品
(九) 軍用航空機若しくはその附属品又はこれらの部分品
(十) 防潜網若しくは魚雷防御網又は磁気機雷掃海用の浮揚性電らん
(十一) 装甲板、軍用ヘルメット若しくは防弾衣又はこれらの部分品
(十二) 軍用探照灯又はその制御装置
(十三) 軍用の細菌製剤、化学製剤若しくは放射性製剤又はこれらの散布、防護、浄化、探知若しくは識別のための装置若しくはその部分品
(十三の二) 軍用の細菌製剤、化学製剤又は放射性製剤の浄化のために特に配合した化学物質の混合物
(十四) 軍用の化学製剤の探知若しくは識別のための生体高分子若しくはその製造に用いる細胞株又は軍用の化学製剤の浄化若しくは分解のための生体触媒若しくはその製造に必要な遺伝情報を含んでいるベクター、ウイルス若しくは細胞株
(十五) 軍用火薬類の製造設備若しくは試験装置又はこれらの部分品
(十六) 兵器の製造用に特に設計した装置若しくは試験装置又はこれらの部分品若しくは附属品
(十七) 軍用人工衛星又はその部分品

参考サイト